円座抄

円座第60号

 「円座」2021年2月号 第60号が届きました。
裏表紙に主宰による〈宇佐美魚目の一句〉が掲載されています。

「菱形に沼描きつづけ二月の死」 魚目 句集『草心』
 何故かよくわからないのだが、魚目の句としてお手本となる俳句だと思える。
 「沼を菱形に描く」というところが良いのだろうか。
 何ものかにこだわって描き続ける姿勢に共感するのか。
 その画家が二月に亡くなったのは事実だろうが「二月」という季語がことに効いているように思える。
 春が忍び足で近づいて来る。 (武藤紀子)
                   
主宰の十句 鳴海
「魚目の忌近し鳴海は椎の秋」
「墓へ行く道坂となり椎拾ふ」
「椎の実に聴かむ昔の話など」
「訪ね来て先生の墓秋深し」
「師を偲び線香と花秋の晴」
「師の墓は学校のそば小鳥来る」
「秋声をたしかに聴けり先生の」
「秋冷の墓石ひしひしと師恩」
「先生が通り過ぎたる椎の秋」
「先生とゆく俳諧の照葉みち」

中田 剛 氏の五句 鳥辺野 より一句
「鳥辺野の鳥のまなこは露の玉」

清水良郎 氏の五句 一乗寺 より一句
「早春やむかし住まひし一乗寺」

特別作品 二人の同人による十句のなかから一句
初明り
 「慶びの天渺々と初明り」 鮫島茂利

花の寺
 「夕されば音を絶ちたる秋の寺」 三好康子

百千鳥集散策……巻頭の五句より
「切り株に貼りついてゐる冬日かな」 横田欣子
大きな切り株がある。林の中の木の間から冬日がさし込んでいる。白い日の光り。さびしいがあかあかとした日の光。……主宰評

朱夏集散策……巻頭の五句より
「両千家門森閑と冬に入る」 大聖寺榧子
 京都市上京区の大徳寺の近くには千利休の流れを汲む表千家と裏千家が細い小川通りをはさんで並んでいる。それぞれの家の木々の繁る庭がかいま見える。表千家には古木の大銀杏が聳えている。出入りするひとも少なくしんと静まっている。……主宰評

 さて、連載は今号も多彩な内容です。
『宇佐美魚目ラビリンス(60)』 中田 剛 氏
『新・千代倉家の四季(52)』 森川 昭 氏
『ニュージーランド便りパート2』 藤田麻依子 氏
『魚目と私(十一)』 外山一機 氏
『星野・馬岡スイッチエッセイ(6)』 馬岡裕子 氏
『平成の名句集を読む 第三十七回』 関 悦史 氏
『俳句探訪(6)俳壇の近作⑥』 横田欣子 氏
『背番号十一の代打者⑥』 橋本小たか 氏
『句歌万華鏡(28)』 藤原龍一郎 氏
『芭蕉論ノート⑥』 松本邦吉 氏
『趣味か修行か句集を読む(9)』 中西亮太 氏

『新・千代倉家の四季(52)』では、〈世上一円風邪流行〉のタイトルのように、享和二年(1802)に流行した お七風邪 が鳴海の千代倉家の日記に、どのように書かれているかが、紹介されています。鳴海近辺だけでなく千代倉家に関係のある大阪や江戸の様子もかいま見ることができます。煎じ薬や、神仏への祈祷、困窮者への救済措置など、現状のコロナ禍と同じような右往左往ぶりです。それにしても、お駒風邪、お七風邪、お染風と女性の名前が冠せられたとのことに驚きました。

 今号には挟み込みの 令和三年「円座」十周年記念大会中止のお知らせ が入っていました。残念なことになりましたが、このコロナ禍の状況では致し方ないと思います。
普通の句会、普通の吟行が心置きなくできる日のくることを信じて待ちましょう。


by enza-hoshitsuzuri | 2021-01-28 15:03 | 円座俳句会について | Comments(0)

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